絵本「ごろごろにゃーん」の魅力

ユーモア満載の絵本
ひとこと紹介

天才「長 新太」が織り成す不思議な世界!これぞ、ナンセンス絵本の代表作!

基本情報

長 新太
長 新太
出版社福音館書店
初版1984年02月15日
おすすめ年齢2・3歳~

あらすじ

ネコで満席の飛行機で、にぎやかな空の旅へ!

くじらのような、イルカのような大きな飛行機が海に浮かんでいます。大勢の猫たちがそれに乗り込み、「ごろごろにゃーん」と出発です。「ごろごろにゃーん」と、飛行機は飛んでいきます。魚を釣りながら「ごろごろにゃーん」。くじらにあっても「ごろごろにゃーん」。山を越え、街をながめ、飛行機はにぎやかに「ごろごろにゃーんごろごろにゃーん」と猫たちをのせて飛んでいきます。長新太の真骨頂! 斬新で愉快な絵本です。

ごろごろ にゃーん|福音館書店

みどころ

繰り返されるリズミカルなテキスト

この絵本はほとんど全てのページが「ごろごろにゃーん ごろごろにゃーん と ひこうきはとんでいきます」というテキストで構成されています。

これは「ごろごろにゃーん と ひこうきはとんでいきます」ではダメでやはり「ごろごろにゃーん ごろごろにゃーん と ひこうきはとんでいきます」でなければならない気がします。

繰り返されるこの絶妙なリズム感の構文は、こども達の中にスッと入り込み、次の瞬間には声になって出てきます。大人が読み始めると何かものすごく新しくて面白いものを見つけた時のキラキラとした顔をして一緒に読んでくれる事もあるでしょう。

以前、何かのインタビューかエッセイでこのごろごろにゃーんというワードについて、「ごろごろ」は、飛行機と猫ののどの音を掛けたもので「にゃーん」は猫の鳴き声だと読んだ記憶があります。

毎ページ丁寧に読んでいくと、私たち大人もなんだかこの不思議なコトバの魔法にかかります。

どんどん予想を裏切ってくる

と、いうかもう予想をする事は不可能ですし、そんな気持ちも起きません💦

特に大きな『手』が出てくる場面は多くの大人たちが困惑をしたようです。でも、これは何だろうなんて考察をする事はしてはいけません。それは全く無意味な事だからです!

本当は魚の形をした飛行機の方が意味不明で、人の手の方が現実的な物であるはずなのに、ここで『手』が登場すると、いかにも『手』の方が大きな違和感を持ちます。私たちは、いつのまにかこの意味不明な飛行機を当たり前のこととして受け入れてしまっているんです。

私たちの意識はなんて曖昧なんでしょう。そんな人の意識のあり方を問いかけてくるようです。

とにかく読まなければ伝わらない

一生懸命に解説していますが、この絵本は実際に子ども達と読んでみなければその良さは伝わりません。私はこの記事を通して「とにかく読んでみてほしい!」と伝えること位しかできません。

それはこの絵本が理屈を超越した魅力と面白さに溢れているからです。

ここで文章として語り切れない事こそがこの絵本の魅力です!まだ読んだ事のない方はぜひ読んでみられてください!これまでの絵本に対する価値観が一変し新しい世界が開かれる事でしょう!

私がこの絵本を選んだ理由

この絵本がこどものともから刊行されたとき、当時の大人達は「訳が分からない」「こんな絵本を出すな」と疑問や戸惑いの声を寄せたそうです。それなのになぜ、この絵本は時代を超えても絶版にならなかったのか。それは、この絵本が子ども達から圧倒的な支持を受けたからです。

事実私も、はじめてこの絵本に出会った時はすごく戸惑いました。「なんだこの絵本は!?」とびっくりしてそっと棚に戻したものです。それでもどうしても気になってしまって、思い切って2歳児の子ども達を相手に読んでみたんです。すると、それはもう大盛り上がり!子ども達はすぐにその絵本を気に入り次の日も「ごろごろにゃーん読んで!」と熱烈なリクエストを頂いた事を覚えています。


なぜ多くの大人がこの作品を楽しむ事が出来ないのか。私はその1つの理由は、私たち大人が子どものように「じっくりと絵を見る」事をしないからだろうと思います。

絵を見る事ができなければ、この絵本の真の面白さに気づく事はきっとできません。

反対に、絵を見る事ができると絵本の世界に入り込んで猫たちと一緒に物語を楽しむ事ができるようになるのだろうと思います。

飛行機から釣り糸を垂らして魚を釣ることに挑戦してみたり、大きなクジラに危うく食べられそうになったり、大きな『手』に襲われそうになったりなど猫達の旅は波乱万丈です。それは都会の街を抜け、山を越え、谷を越え、大海原を超えていく大冒険!ページを捲る度に登場してくる思いもよらないモノは、毎回読者の予想を裏切ってきます。

“おとなはだれも初めは子どもだった。しかし、そのことを忘れずにいるおとなはいくらもいない”

— サン・テグジュペリ

こんな言葉を思い出します。長さんはきっと、子どもだった頃を忘れずに大人になった稀有な方だったのだろうと思います。


また、長さんはこの絵本についてインタビューで以下のように語っています。

ナンセンスっていうのを、不まじめだってとらえるおとなが多くて、『ごろごろにゃーん』なんかも、「これはどういう意味か」なんて聞いてくるおとながいる。ナンセンスを描いたのに、どういう意味かって言われても、ちょっと困るわけでね。(笑)

【第9回】長新太さん|(1)大きい動物が好き|福音館書店


― 大人はどうしても、理屈の通ったものでないと信用しない、という面が強いですね。もちろん、「ためになる絵本」もあっていいんだけど、「意味はないけれどもすごくおもしろい、ユーモアがあって子どもが本当に喜んで笑っちゃう」、そういう本も重要だと思うんです。小さな子どもの視点はすごい。僕はそういう人たちを相手に本を描いている。僭越な気がします。言ってみれば、先生に対して自分の絵を見せているような。だから、子どものすごいところ、エッセンスを、全部自分の中に集めちゃって、そこからまた、ぐわっと出して創作しよう、という気持ちがあります

9月24日 長新太さん|ナンセンス絵本の第一人者|福音館書店

このようなインタビューからも、長さんがとても真剣に絵本作りに取り組んでいるのが分かります。決して子どもを馬鹿にしている訳ではい。本物のナンセンス絵本がこの「ごろごろにゃーん」なのです。

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