原作に忠実!!この物語の本当のユーモアに出会える本
基本情報
| 訳 | 瀬田貞二 |
| 絵 | 山田三郎 |
| 出版社 | 福音館書店 |
| 初版 | 1960年5月1日 |
| おすすめ年齢 | 3歳~ |
あらすじ

イギリスの名作昔話を、原話に忠実に絵本化
貧しいこぶたの3兄弟が、それぞれの家を作ることになりました。最初のこぶたはワラで、2番目のこぶたは木の枝で家を作りました。しかし、オオカミがやってきて2つの家はふきとばされ、2匹のこぶたは食べられてしまいます。3番目のこぶたはレンガで家を作りました。レンガは重くて丈夫なので、オオカミがきてもへっちゃらです。さらに3番目のこぶたは、知恵をしぼってオオカミを退治しようと考えます。オオカミ退治はうまくいくのでしょうか?
私がこの本を選んだ理由

○○に忠実である事
三匹のこぶたは、10種類以上の絵本が出版されていますが、そのストーリーは絵本によってそれぞれです。ですが、原作に忠実なのはこの絵本です。やはり一番大きな違いは結末でだいたい以下の3つのシーンに分かれる事だと思います
1 おおかみと子ブタが仲直りするもの
2 おおかみが死んでしまうもの
3 おおかみが大やけどをして逃げるもの
このような結末の違いは、再話者の物語に対する評価・文学観・教育観の違いから起こります。
では、本当の結末はどれか。三びきの子ブタはイギリスの昔話です。イギリスの昔ばなしを調べるのに一番信頼のおける再話者はジェイコブスという人です。彼の再話では、狼は②の死んでしまうという結末を迎えます。
ただし、ただ死んでしまうのではありません。そこには盛大なユーモアがあるのです。そしてこの絵本こそ、ジェイコブスの再話を忠実に和訳したものになります。やはり、子ども達には本物の文学とその文学の持つ価値に触れて欲しいので、私は保育施設ではこの本を選びます。

実は、イギリスの昔話という事を知らない人も多かったのでは?
ラストシーンのここが良い!
この本のラストシーンのユーモアはもはや芸術です
この絵本では3匹のうち、2匹のこぶたは狼に食べられてしまいます。そして、最後のこぶたの家に狼が煙突から登って家へ侵入してこようとする場面をもって物語は山場を迎えるのです。
前の二匹が食べられた事を踏まえると、この場面には大きな緊張感があります。部屋に入られてはこぶたに勝ち目は全くありません。「これまでか…もうおしまいだ…」と思われたその時、
こぶたはお湯をいっぱい沸かして待ち、狼が落ちてくる瞬間に、さっと蓋をとって狼を鍋に落とし次にさっと蓋をしてコトコト煮込んで食べます
これまでの緊張感が一気に開放されて、誰も予想しなかった結末へと物語は向かうのです。ここが、三びきのこぶたがシェイクスピアの文学に匹敵する程の文学的価値を持つと言われる大きな場面でもあります。
ここで子ども達は物語から残酷さを感じるでしょうか?お話に慣れていない年齢の高い子やお話に慣れていない大人はもしかしたら残酷さを感じる子もいるでしょう。
でも、小さな頃から保育施設でお話に慣れ親しんだ子やお話の本当の面白さを知っている大人であれば健全なユーモアをしっかりと感じ取れるはずです。クラスの子達を信じて自信を持って読んであげて欲しいと思います。

ラストシーン以外にも、ユーモラスな場面がたくさん!
読んだ事がない人は、ぜひ一度手に取って、その魅力を感じてみてね!



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