【第2回】以後気を付けます!を禁句にしよう

学びの備忘録

組織の中で、何か不都合があったり、ミスが起こった時、たいてい人は悪くないのです。

※例えば、悪意があって会社の備品を横領したり、破壊したりする人がいればそれはその人が悪いかも知れません。でも、そんなケース以外の場面でその場にいただけ、たまたまその作業に従事していた当事者に100%の責任があるケースはほとんどありません。

私は前職でこの考え方を知ってから、物事を広い視野でとらえる事が出来るようになりました。

人のせいにする事は思考の放棄

私は以前、大手鉄鋼メーカーに勤務していました。

そこでミスが起きた時、「以後気を付けます」は禁句でした。

なぜなら、気を付けるというのは何の解決にもなっていないからです。

今日はその時の学びをシェアしていきます。

原因を探し出せ!

保育業界では少しのミスで起こった事態に対して

上司「今度から気を付けてね」

部下「はい、以後気を付けます」

で済ませてしまうケースが非常に多く見受けられるように思います。(あくまで私の主観ですが・・・)

でも「気を付けます」で済ませているうちは、再発リスクの割合は非常に高いものと思っていいでしょう。 

Point

なぜそうなったのか? ーその原因を考える事を優先課題にする!

なぜ「気を付けます」では不十分なのか

①その人は気を付けるようになっても、未来に入ってくる部下は気を付けないままになり再発する。

②気を付ける!というアクションはあまりにも曖昧で、具体的に何をどうすればよいのかが個人の解釈によって大きく変わる。つまり、組織として再発防止策を講じたとは言い難い。

③個人の先生が責められている構図になり、心理的に苦しい

④ミスを責められる構図が成り立つ事が分かり、周りの職員も安心して働けない

⑤常に気を張っておく事が解決策となり、社内の雰囲気劣化や、コミュニケーションにおける質の低下につながる恐れがある。(大人の関係が悪くなると、子ども同士の関係も良好でなくなる)

人間関係にも同じ事がいえる

  • あの先生がいなければコミュニケーションが円滑になるのに
  • あの先生がいると保育がしにくいわ
  • あの先生のやり方が気に入らないの

という方向の愚痴は保育業界に限らず、どの職場でもよくある事だと思います。

でも、これも結局は状況を人のせいにしているだけであり、ここで思考を止めていると、『自分にとって都合の良い人がたまたま集まる』しか状況の改善策はありません。

でも、職場というのは友達のみで集まるコミュニティとは違って、意見や考え方が合わない人間がいる事にこそ価値があるのです。意見や考え方、感じ方や捉え方の異なる人間が集まるからこそ、新しいアイデアやチャレンジが生まれ、自分自身も(葛藤しながらも)様々な考え方に触れ、多くを学ぶ事が出来ると思います。

職場においては

△みんな違って みんな良い

ではなく

◎みんな違うからこそ素晴らしい!

のです!!!!

そして、コミュニケーションにミスマッチが起こった際にも

  • 私が悪いんだ
  • 私が我慢すればいいんだ
  • あの人が悪いんだ
  • あの人がもっとこんな感じならいいのに

と”人”のせいにするのではなく、

状況を改善する為に必要な根本原因はなにか?を思考し

  • 自分の思考や、思い込みを変える事で改善できないか
  • 職場環境を再構築する事で改善できる事はないか
  • 仕組みを変革する事で改善できる事はないか

を思考する事が状況改善の近道なのではないかと思います。

自分がミスをした時

「以後気を付けます」で済ませるのをやめてみましょう。

  • 子どもにけがをさせてしまった
  • ついつい乱暴な言葉掛けで保育をしてしまった
  • 何気ない一言で一緒に働く仲間を傷つけてしまった。
  • 保護者に誤解を生むような伝え方をしてしまった

保育の中でミスしたな。と思う場面は他にもたくさんあると思います。

「でも次から気を付けよう・・・」で終わらせず、そこから思考を始める癖をつけていく事が大切です。まずは自分がそのようなアクションをしていく事から始めていきましょう。

例えば、私は以下のような状況改善を試みた事があります。

例1)運ていから落下した事故を受けて

※個人情報防止の為、少し脚色してあります。

事故の状況

運ていに上って遊んでいた年中児の男の子、少しアクロバットなわたり方をしていた為、態勢を崩して落下。病院に搬送され、骨折の診断を受けた。

ここで、大切なのが何を問題とするかで解決策が変わってくるという事です。

例えば、子どもが落下した事を問題として取り上げてみましょう。すると以下のような問題点と対策が浮かび上がってきました。

問題点と対策
  • 保育士がついていれば、大きなけがを防げたかも知れないから、保育士がついている時だけ運ていで遊んで良い事にしよう
  • 落下リスクのある年齢の子の使用を禁止して、年長専用の遊具にしてしまうのはどうか
  • そもそも禁止してしまった方がいいのではないか

さぁ、これらの改善策はどうでしょうか。確かに、これらの方法なら子どもの落下を防ぐ事が出来そうですね。でも、この問題点と対策は結局”人”のせいにしています。また、子どもに禁止を課す事で状況の改善を狙っています。これでは、禁止が多く、居心地の悪い園になってしまいますね。

今回は、子ども(人)の能力が未熟な事と、保育士(人)の監視力が未熟な事の2点が問題に繋がったという見方です。

人のせいにすると、人のせいでまた問題が起きます。例えば、指示理解が難しい子が保育士が近くにいないのに運ていに上ってしまった。禁止だとは分かっているけど、視覚優位なお子さんがつい上ってしまった。という場合、この事故は子ども達が悪いのでしょうか・・・?


では、次に子どもが怪我をした事を問題として取り上げてみたいと思います。すると以下のような問題点と対策が浮かび上がってきます

問題点と対策
  • 落下時、地面が柔らかい素材であれば怪我を防げたかも知れないからウッドチップを埋めるのはどうか
  • そもそも落下した際に、落下距離がありすぎるのではないか。地面と運ていの高さ(距離)を短くしたら良いのではないか。

今回は、落下をしてしまうのは保育運営上防ぐことの出来ない事と仮定して、それでも怪我をしない環境があればよかったのではないかという考え方をしています。

今回は、環境が問題だったという見方です。

私たちの園では、これらの考えのもと運ていの下だけ盛り土をしてさらにその上から人工芝を敷きました。そうする事で、運ていと地面の距離を近くしつつ、落下先の地面の軟度を上げたのです。

ピンチはチャンス

いかがでしょうか?

運ていから子どもが落下した事故を受けて、

①「以後気を付けよう!」と子どもや大人といった”人”に気を付けさせて改善するパターンと、

②「環境を再設定してみよう」と改善したパターン。どちらがより良い改善だと言えるでしょうか。もちろん後者ですね。

①のパターンでは、職員や子ども達の緊張感を高める事で再発を防止しようとしましたが、

②のパターンでは以前に増して子どもも大人も安心して遊べるようになったと思います。

そう、ピンチは最大のチャンスなのです。もちろん、はじめからミスや事故がないに越した事はありません。でもミスや事故があった時こそ、組織としての成長のチャンスでもあるように思います。

例②子どもをつい急かしてしまう。

これは深堀はしませんが、悩む先生も多いと思います。

自分自身で「わかっているのに急かしてしまう。」と悩んだり

特に主任保育士さんや園長先生が「あの先生にもっと丁寧な言葉かけをしてほしいのに伝わらない」と悩む場合もあると思います。

これも、人のせいにばかりしてはお互いに苦しいです。もちろん、言葉の重要性を学んだり、研修する事は前提として、それでも保育士の言葉が変わらないのにはどんな要因があるのでしょうか。

例えば、これも保育士(人)に気を付けさせたり、自分が「気を付けよう!」と強く思うだけでは不十分です。

言葉や関わりに気を付けるというのは脳の膨大なエネルギーを使う為、めちゃくちゃ難しいです。仮に気を付けるの天才で、自分が気を付けられたとしてもそれを後輩は真似できません。これではその場しのぎの解決と言わざるを得ません。

例えば「心理的、時間的な余裕がない」という状況を問題として取り上げてみるとアクションが変わってきませんか?

まとめ

今回は、私が前職で学んだ「ミスの再発を最小限にする思考法」という事を記事にしました。

ミスや事故が起来た時、それを人のせいにして「以後、気を付ける!!」という解決策を講じる歴史に終止符を打ちましょう。特に、保育業界はこの文化がまだまだ根強いように思います。私たちで止めましょう。

「以後きをつけます!」は一見、その人の揺るがない決意や、心意気の現れのように思えますが、冷静に見ると思考の放棄です。本気で状況を改善したければ、きちんと要因を解析し、

環境・仕組みの2点を先に見直しましょう。

そのミスが重大であればあるほど、人のせいにしたくなりますが、

重大であればあるほど、人のせいにしてはいけません。

私たちはAIでも機械でもありません。完璧な人間なんてこの世にいないという事を前提にするならば、ヒューマンエラーは必ず起きると仮定する方が理にかなっています。

では、どうすれば良いのか。仕組みや環境作りでカバーするんです。

何かあった時に個人の従業員が全責任を負ったり、組織ではなく○○先生が悪いと言われてしまうような風潮を打開して、保育業界がもっと人のせいにしない業界になる事が、僕の夢の1つでもあります。

以上。momaでした。

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