園見学にいらしたA先生から、こんな言葉を頂いた事があります。
A先生「うちの園の子達は、叱られるような事ばかりするからこんな保育は今は無理。こんな玩具も出したいけれど、出せないんです。」
少し厳しい事を言うと、これは責任を子どもに全て押し付けてしまっている状態ですので、これ以上どうしようも出来ませんね。もっと真剣に子どもに向き合う事が出来たらきっと現状を打開できます!
でもきっと、A先生もそんな事は分かっているんです。
子ども達とも向き合いたいと思っているし、現状を子ども達やご家庭のせいにしたくないとも思っているはずです。お辛いですよね。
私も、保育士なので気持ちはよくわかります。今日はその時どのように現状を乗り越えたら良いのかというお話です。
先に変わるのは大人の役目

生きづらさを感じる子たちを支援する臨床の現場で働くある先生がこんな事を言っていました。
大人たちは「なぜ子ども達はあんなに叱られる事ばかりするのか」
と思っていますが、
子どもたちは「大人はなぜあんなに叱る事ばかりなのか」
と思っていますよ。
だから、歩み寄る事が必要なのです。
子どもと大人、どちらから歩み寄る方が簡単ですか?もちろん大人からです。
保育士1年目の頃わたしは、俗に言う個性的で元気なクラスを担任していました。「子ども達が𠮟られるような行動をやめてくれたら良いのにな~」と思ってしまった事もあります(笑)
棚の上に上って欲しくないな。人のものを盗らないで欲しいな。まだ遊びたいと駄々をこねないで欲しいな。他の人が寝ている時は起きてても良いけれど静かにして欲しいな。
ー子ども達がこんなことをせずに居てくれたら、私も叱らなくていいのに・・・。
そんな風に思う気持ちはすごく分かるのです。そして目の前の子が𠮟らなくていい子になる方法を発見しました。▼
目の前の子が叱らなくていい子になるコツ

では、子ども達が叱らなくていい子になるにはどうしたら良いのでしょうか。
佐々木正美さんという方が著書の中でこんな風に言っています。
「激しく叱るほど、”叱られる子”になります。
優しく穏やかに伝えれば”叱らなくていい子”になっていくものです」
— 『この子はこの子のままでいいと思える本』佐々木正美
もしかしたらただの綺麗事のように聞こえるかも知れませんが、これは本当だとわたしも思います。
先に大人が叱らないと決める事。これが、目の前の子が𠮟られない子になるコツです。
順番は必ず大人から

「この子達が怒られるような事を辞めてくれたら、私も怒らなくて済むのに」と多くの大人がそう考えます。
現状を好転させるために、子どもに先に変わって貰おうと思っているのです。
でも「順番は必ず大人からです」と佐々木先生は言います。
確かに、認知能力も大人の方が高くて当たり前だし、人生経験も大人の方が積んでいます。!ここは大人が得意な部分です。なので大人の方が先に変わる事が出来ます!
大人が変わる事。叱らなくなること。これを大人の成長という事も出来ますね。大人が先に成長する事で、子ども達が成長していく。これがともに成長するという事だと私は思います。
:親が叱らなくなって子ども達は初めて行動を変えてくれます。
1つの思い込みを捨てる

私たち大人が変わる(成長していく)為に、まず捨てなければいけない思い込みが1つあります。
それは「叱らずに育てるなんてできない」という思い込みです。
例えば会社で1日に10回も20回も叱られ、怒鳴られ、時には納得できないままに謝罪をしている友達がいればとても可哀そうだと思います。
園で1人の小さな子にそれと同じ事が起きていると考えれば、激しく叱る行為がどれほど本人にとって辛い事かが分かります。
強い屈辱を感じ、劣等感をおぼえ、自信はどんどん失っていく。自分に自信がないから、また人の気を引きたく「僕を見て!」と言わんばかりに叱られる事をしなければいけなくなる。そんな負のループの中では子どもと大人の両方が苦しいばかりです。
叱らずに育てる事は出来ると信じる事が現状打開の第一歩です。
でも大事な事は教えたい

大人は子どもの事が大切で、おおいに愛しています。だからこそ、叱るのだと思います。
「こんな事はするもんじゃない」「こういう時はこうしたら良い」「それは悲しい事なんだ」と教えるのは良いのです。
その時に激しく人格を否定するように自分の感情をぶつけたり、有無を言わさずに命令したりする必要はありません。
はじめて冷静に静かに「こういう時はこうしようね」と伝える時、はじめはきっと素直に聞いてくれないと思います。これまで激しく叱られてきた子であればあるほど、はじめは聞いてくれないと思います。
けれど大人の態度が変われば、だんだんと子ども達も話を聞いてくれるようになり、少しずつ叱られるような事をしなくなっていきます。そして大人も子どもに対して寛容になっていきます。
大切なのは根気強く待つ事です。ぜひ信じて待ってあげてください。子ども達は力強く成長しています。
何度も教えたら良い

1回で教えきる必要はありません。子どもも、大人も色々な事を何度も失敗して覚えていきます。2度間違えたら2度、教えればいいし、10回間違えたのなら、同じ事を心を込めて10回教えてあげたら良い。
そうしていくうちに「叱られない子・叱らない大人」へとお互いに成長していきます。
こう考えると、次はしないで!なんて難しい約束(=プレッシャー)をたててしまう事も、もしかしたら責任を子どもにおしつたい大人の卑怯なやり方だったかも知れないと、この記事を書きながら思いました。
「次はしないで」と勝手に条約を締結して約束が違う!と怒る事は、もしかしたら子ども達に間接的に命令しているだけだったかも知れませんね。冷静に考えたらすごく理不尽な事です(笑)
参考文献とまとめ

今日は、叱られるような事をしない子に育てるには?というテーマで記事を執筆してみました。
冒頭の問いかけ「なぜ子どもは叱られる事ばかりするのか」に対する答えは「大人が叱るから」というなんとも屁理屈のような答えでした。でも、ここまでお読みくださった皆さんならきっとその意味が深く分かると思います。
保育も、家庭での子育ても大変です。日々忙しく、大人も疲弊し余裕がなくなってしまうような現状もわかります。
私たち大人がまずは自分の力を信じて「叱らない・否定しない」子育て(保育)を実践してみましょう!私たち大人ならきっと出来ます!
時には上手くいかない事もあるかも知れませんが、うまく出来る日がだんだんと増えてくると、心から自分を信じて実行していきましょう。
順番は必ず大人からです。
参考文献▼
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