後世まで美しい自然を残すために、保育士に出来る事

エッセイ

5月25日。少し冷たい夜風が心地よい今日は、妻方の祖父の四十九日でした。

法事は、祖父が生前住んでいた昔ながらの平屋作りの母屋で執り行われました。

親戚の方がたくさん集まり、食事を囲みながら色々と話をしていました。この場に私の甥っ子(年少)も参加しておりましたが、このような集まりに小さな子が参加するような事も最近では珍しいのかも知れません。とても大切な時間を過ごしました。

そして、いよいよ帰ろうかという時に外へ出てみますと

夜空にフワッと黄色い光が灯っては消えを繰り返していました。まさかと思いあたりを見回すと、たくさんの柔らかい光が灯っては消え、また灯っては消えており、世闇を幻想的に照らしています。

この光が何であるのか、皆様もおおむね察しがつくと思いますが、なんとたくさんのが優しい光を纏いながら夜道を飛び回っていたのです。

その光景は本当に幻想的で美しく、少し懐かしい思い出が胸をくすぐる様な感じがしました。また、ふっと幼少期の思い出が蘇り、もう会えない人や戻れない時間へ想いを馳せるきっかけにもなりました。

思えば毎年、その夏にはじめて蛍をみた日には同じような感情になります。

蛍をみただけで、これだけ様々な深い想いを胸に抱けるのは、今日のような風景を私も幼少期に親しんだからだろうと思います。

祖父の家がある場所は、まだまだ昔ながらの美しい風景が残る地域の為、蛍もそれほど珍しい生き物という印象ではありません。しかし、保育園に通う子ども達の中には「蛍を見た事がない」という子も非常に多いのです。

確かに、私の小さかった頃からすると蛍の見られる場所は限られるようになってきており、その数も減ってきているような気がします。少し人里から離れた場所にわざわざ見に行かないとみる事の出来ない昆虫になりつつあります。

このままでは私の地元も、蛍を見る事が出来ない町になってしまうかも知れません。私としては美しい自然が失われる事は非常に嘆かわしい事です。今日のような風景はぜひとも後世に残していきたいと思うのです。

そして欲を言えばこれからの子ども達にも、ぜひともこういった美しい自然の中に身を置く事を原体験にしながら人格を形成していって欲しいと思います。

保育のプログラムにおいても自然体験というのが大変人気になっているのは良い事ですが、ただアクティビティーとして自然と思い切り触れ合って楽しめば良いというもので終わるのはもったいないと思うのです。

川遊びをする事も、キャンプをする事も、お泊り保育で天体観測をする事ももちろん素晴らしい活動だと思います。また、都会の園ではそういった事でしか自然を身近に体験できないという条件の場合もあるでしょう。

ただもし、子ども達の身近に美しい自然がまだ少しでもあるのなら、その身近にある自然を大切にするような時間を経験する事の方がもっと大切な気がするのです。日常の中にそういった時間を持てる事がずっと大切な気がするのです。

これからを生きる子ども達は、世界中が持続可能な社会の実現という大きなテーマを持っている時代を生きていきます。

幼児期においても、自然を大切にできる子になって欲しいと分別を学んだり、ごみ拾いをしたりする活動を積極的に行う園が増えております。もちろんそんな活動も良いと思いますが、その土台には身の回りの自然を知る事が欠かせないと思うのです。

身近にある花の名前を知り、鳥の名前を知り、そして、動物や昆虫の名前を知りその特徴を知る。さらには、天気などの自然現象にはどんなものがあるのかを知る。

そうして、自然を身近に感じ、その面白さや美しさに気が付いていく。

自然の美しさや面白さを知っている子はきっと自然を大切にすると思います。

私は、今日の蛍をずっと後世に残していきたいと思っています。今ある美しい日本の風景をずっと残していきたいと思うのです。

そのために私に今できる事は、子ども達が身近な自然の美しさを知り、感動し、その面白さを体験できるようにしていく事だと思います。

ただ、そんな私も自然に対する知識は浅く、残念ながら子ども達に自然の素晴らしさをたくさん教える事の出来る大人ではありません。だからせめて、私自身が子ども達と過ごす日々の中で身近な自然を愛し、大切にする大人でありたいと思うのです。

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