大工と鬼の駆け引きが面白い!
基本情報
| 再話 | 松井 直 |
| 絵 | 赤羽 末吉 |
| 出版社 | 福音館書店 |
| 初版 | 1962年6月1日 |
| おすすめ年齢 | 4歳~ |
あらすじ

橋をかける大工と目玉が欲しい鬼の取り引き
何度橋をかけてもたちまち流されてしまう川に、橋をかけるよう村人に依頼された大工が、川岸で思案していると、鬼が現れて、目玉とひきかえに橋をかけてやるといいます。いいかげんな返事をしていると、2日後にはもうりっぱな橋ができあがっており、鬼は目玉をよこせとせまります。「おれのなまえをあてればゆるしてやってもええぞ」と鬼がいうので、大工は……。日本の昔話の絵本。
私がこの本を選んだ理由

○○に支えられて、幼児でも十分に楽しめる
大工が鬼六の名前を当て場面の駆け引きの面白さが本当に分かるのは、もう少し後(小学校1~2年生くらい)だろうと思います。
もちろん、中にはこの面白さを分かってお話を見る幼児さんもいらっしゃいますがそれは稀なケースだと思います。それでも、このお話は幼児の子ども達に人気があります。
それはなぜなのか。恐らく、これこそが挿絵の持つ力なのではないでしょうか。この絵本は挿絵に支えられて、幼児でも十分に楽しめます
色のあるページとモノクロのページが交互に案っている事で、全体に力強さと活気、リズムが生まれ、見ている読者を飽きさせません。特に、画面の中では真っ赤な赤鬼がとても引き立ちます。
そして、この赤鬼の表情をこんな風に上手に描けるのも、流石ですね。
幼児の子ども達はこの鬼の絵に大きな魅力を感じるから、駆け引きの面白さこそ分からなくても、この絵本を「読んで」と持ってくるのだと思います。

私も、何度も読んでいるうちにこの鬼六に愛着が沸き、特に彼が『にかにか』と笑う表情が大好きです🎵
物語の鍵を握る○○!その描き方が本当にうまい!
このお話は、目が物語の鍵を握ります。鬼が大工に「目玉よこせ」と迫ってくる。つまり、目がとても重要な鍵を握る物語なのです。それを思ってこの絵本のページを捲ってみますと、おにろくの目がとても豊に描かれている事に改めて気づきます。

今回は、【目】に焦点を当てて、絵本を場面ごとに解説してみるよ!↓
表紙、この表紙の鬼は本編では出てこない。表紙用に改めて描いているのも意図があるように思われるが、個人的には表紙にこの物語の一番特徴的なシーンである問答の場面を持ってくるのは自然であるように思う。ただ、とてもにかにかと笑う鬼に出会うのはやはり本編である方がよさそうだ。表紙の鬼は無邪気で悪戯に笑っているような印象があり物語への期待を膨らませてくれるような印象がある。
第6場面、鬼六が大工に交渉を持ちかけるシーンの目。鬼六の心にも非常に余裕があり、穏やかな目をしつつ、意地悪に笑っているようにも見える。
第9場面、「さぁ、めだまぁ よこせっ」と言いながら大工に迫るシーンは、少し吊り上がった鬼六の目が緊張感を高めています。顔は上を向き、目玉は下向きで、大工を見下しているように描かれている。
第12場面、大工が出まかせを言って鬼六が喜ぶシーン。鬼六がにかかと笑う場面では、第九場面と同様、鬼六の顔は上を向き、目玉は下を向いているのだが、大工を見下している感じはなく、むしろ喜んで大笑いしているからこそ、頭が上を向いてしまっているという感じがよく分かるような目の描かれ方をしている。
第13場面、大工が出まかせを言っている事に、鬼六が笑っているのだが、第12場面の大胆な笑い方とは違い、とても相手を馬鹿にするような笑い方になっているのが絵からみてとれる。もう、可笑しくて仕方ないといった具合だ。この描き分けもさすが赤羽さんだと思う。
第14場面、今までの表情とは一転、悔しそうな鬼の目がよく描かれている。目をガッと見開き、目尻は吊り上がっている。黒目が少し小さく描かれているのも印象的だ。ここで、大工がすごく余裕のある目をしているのも良い。
さらにこの14場面で、二人の物理的な大きさが逆転しているのも凄く良い。これまでは鬼が優勢で大工が劣勢だったのだが、その二人の立場が逆転した事がこの絵でよく語られている。



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