絵本「おおかみと七ひきのこやぎ」魅力

名作絵本
ひとこと紹介

日本人に最も親しまれたグリム童話!

基本情報

作:訳グリム:せた ていじ
フェリックス・ホフマン
出版社福音館書店
おすすめ年齢4歳ごろ~
初版1967年04月01日
moma
moma

本格的で美しい絵が目を引く、グリム童話の絵本だね!

あらすじ

おなじみのグリム昔話

おおかみを家にいれないよう注意しなさい。おかあさんやぎはこやぎたちにそういって森に食べものを探しにでけます。こやぎたちは、おおかみの「しわがれ声」や「黒い足」をしっかり見ぬいて、おおかみを追い払います。しかし、おおかみは知恵を働かせて「しわがれ声」を「きれいな声」に、「黒い足」を「白い足」に変えて再びこやぎたちの家にやってきます。こやぎたちは、とうとうおおかみに騙されて家の扉をあけてしまいます。

おおかみと七ひきのこやぎ|福音館書店

みどころ

絵が語る物語。

スイスの芸術家、ホフマンによる挿絵が本当に印象的な絵本です。

「おおかみと七ひきのこやぎ」という絵本は、様々なイラストレーターさんや作家さんがタッグを組んで出版していますが、どれもポップすぎるものばかり。

少々残酷なお話なので、保護者さんは良かれと思ってこの読みやすくポップに描かれた絵本を選ぶのだと思いますが子ども達はすぐに飽きてしまいます。

特に、保育園で1人でゆっくりと絵本を手に取り捲る場面ではポップな昔話はババっと消費するように捲られる事が多いですが、この絵本は細部まで絵を読む事が出来るのでその世界に文字が読めない子でも十分に入り込む事が出来ます。

扉絵からすでに魅力的なこの絵本は是非、まずは大人がゆっくり眺めてその世界を体感して欲しい1冊です。

緊張感のある表紙にドキドキ

表紙は、第8場面の絵がそのまま称されています。なぜこの場面が表紙なのでしょうか。少し意味ありげです。

子ども達が絵本の表紙を開くのと、子ヤギ達が扉を開くのがリンクしているようにも感じられる絶妙な仕掛けがされているなぁ~と思いました。

勇気をもって表紙を開くと、登場人物が全員描かれた絵があります。ここに物語の中で重要となるキャラクターやアイテムが散りばめられ、内容を考察させます。

期待感が徐々に高まっていく導入は子ども達をしっかりと物語の世界に誘ってくれます。

お母さんが、愛に溢れている

お母さんヤギはとてもしっかり者で強い女性のようですね。子ども達に「狼にはくれぐれも気を付けて」と言い聞かせるシーンでは、子ども達とお母さんの関係がよくわかります。

また、本文に登場する

こやぎたちを かわいがることといったら、どのおかあさんにも まけないくらいでした。

おおかみと七ひきのこやぎ(世界傑作絵本シリーズ)

という一文から、愛に溢れた母である事がよく伝わってきます。

こういう語りは、子ども達も嬉しくてたまらないでしょう。とてもあたたかい気持ちになれる素晴らしい一文ですね。

七ひきのこやぎ達がよく描き分けられている

七ひきのこやぎにはきっと、それぞれにキャラクター設定のようなものがしっかりとあったのだとおもいます。

どの場面も子ヤギ達がよく描き分けられていて、それが物語に現実味をもたらしているのが分かると思います。

このように細部まで繊細に描かれた本だからこそ、現実味を帯びたファンタジーとして子ども達が絵本の世界に何度も足を踏み入れる事が出来るのだと思います。

狼の戦略が静かに描かれる

狼は子ヤギ達の家へ行きますが、正体を見破られてしまいます。冷静な狼は町へ繰り出し、様々な作戦を実行していきます。

その場面が本当にドラマチックなのです。

おおかみに怯える床屋の主人たちや、靴屋の2回から様子を見守るお母さん、そっと隠れる猫など、町全体が狼に驚きの印象を持っていて、それぞれに良いドラマがあります。

この街並みはホフマンの住んでいるアーラウの街並みが舞台になっています。物語に現実味を持たせるのに十分すぎる場面の描き方ではないでしょうか。

緊張感

狼が部屋に飛び込んでくるシーンは本当に緊迫感があります。静止画とは思えないスピード感で描かれるこの場面は、物語の山場でしょう。

そして、事態を把握したお母さんヤギの悲しみも本当によく描かれています。

ラストシーン

最後のページに文字はなく、並んで眠る子ども達をお母さんが見守るというとても幸せな絵で物語は幕を閉じていきます。

ここも、ホフマンがこだわりを持って付け加えたシーンです。

これまでの緊張感が一気に緩和し、愛に溢れる場面が十分に描かれます。この場面は噛みしめて絵を読みたいですね。実の娘の為に描いたこのお話はこのページにこそ、大きな意味があります。

レビュー・感想

ホフマンさんは、1937年、長女サビーネの誕生とともに父親となり、3年後の1940年、次女クリスティアーネが誕生します。さらに3年後の1943年、三女スザンヌが生まれ3人の子を持つ芸術家になります。

そして1945年、長男ディーターが生れるとき、百日咳にかかって兄弟にあえなかった三女スゼンヌをなぐさめるためにつくったのが、彼の最初の絵本『おおかみと七ひきのこやぎ』でした。

この時一番末のヤギが活躍するこのお話を三女に贈ったホフマンの愛がとても素敵です。

この話を知ってから私はすっかりこの物語のファンになりました。細部まで拘りきって描かれたこの絵本は、もともと出版する予定もなく、ただただ、スザンヌというたった1人の子どもの為にホフマンという父が描いた物語だったのです。

保育園でも、この絵本を子ども達は大好きです。中には「狼がかわいそうだ」「ヤギ達はちょっとやりすぎだ」という子もいました(笑)この子はよく物語を体験しているなぁと嬉しく思いました。

また、この絵本を見るときの子ども達の中にも物語に沿って緊張感とその緩和が見られます。私が子ども達は本当に全身で絵本を読むんだと知った絵本でもあります。

絵が多くの事を語ってくれるこのお話は、子ども達に絵本を感じ取って物語を読み取り、共感する楽しさや体験を与えてくれるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました