懐かしい!国語の教科書では鉄板の、誰もが知る国民的物語
基本情報
作 | レオ・レオ二 |
訳 | 谷川俊太郎 |
出版社 | 好学社 |
初版 | 1969 |
おすすめ年齢 | 4歳頃~ |

ラストシーンだけじゃない!見どころがたくさんの絵本だね!!
あらすじ

小さな黒い魚スイミーは、兄弟みんなが大きな魚にのまれ、ひとりぼっちに。海を旅して出会った仲間と大きな魚に立ち向かいます。
みどころ

たくさんの技法が登場する物語の山場!
この物語の山場は、ひとりぼっちになったスイミーが海を泳ぐシーンであるように思います。何しろ、このシーンは全編14場面のうちの7場面も費やして描かれるシーンだからです。最もページを費やして描かれたこのシーンにはどのような意味があるのでしょうか?
そしてこのシーンは、場面ごとに別々の絵画技法を使って描かれています。レオ・レオ二がこの場面にとても力を入れていたのが分かりますね。
本当に力強くて美しい場面ばかりです。是非1ページずつじっくり眺めて頂けたらと思います。

どの場面も力強くて、美しいです!
まさに総合芸術
レオ・レオ二は、テキスト+イラストレーション+思想(考え方)がピタッと一致した時、最高のデザインが出来る。と語っています。
スイミーは、この3つが一致したまさに、総合芸術として完成させられた物語であると私も思います。だから、教科書のように挿絵を省いたり、その位置関係を変えてしまうのは非常にもったいないと思います。
この物語には是非、絵本体験として出会って欲しいと私は強く願います。

教科書製作側に事情があるのも承知なんですけどね・・・笑
谷川俊太郎さんの神翻訳が物語を引き立てる
詩人、谷川俊太郎さんは本当に素晴らしい翻訳家だと思います。スイミーも全体を通して、詩的で美しい言葉の世界が広がっています。
読み聞かせをした事がない方は、スイミーを一度声に出して読んでみてください。すると、何の違和感もなく、口から自然と言葉が発せられるのが分かると思います。
良い絵本は、読みやすいものです。こちらも絵本「てぶくろ」等と同様に、スラスラと自然に読める素晴らしい絵本だと思います。
余計な事は言わず最小限の言葉たちですが、最大限にスイミーの心情や海の魅力が伝わります。選び抜かれた言葉たちが紡ぐスイミーの世界は涙が出るほど美しいですね。

親しんで覚えれば、子ども達も物語を真剣に語ってくれますよ。
ラストシーンは圧巻
有名なラストシーンは、何度見ても圧巻です。
それまでのスイミーの人生を思うと、この1歩がいかに勇敢で偉大だったかが分かります。
スイミーは隠れていた魚たちに1つのアイデアを示しますが、その群のリーダーになった訳でもないし、偉い立場になった訳でもありません。スイミーは目になるという役割を自ら選び一緒に作戦を実行します。
レオ・レオ二は、「人々とは違う視点で物事を見る事が出来る」という部分を芸術家の大きな役割だと考えていたそうで、スイミーの役割が目だった事にも深い意味がありそうです。
このラストシーンは、私が勤める保育園の廊下にも飾ってありますが見るたびに心がグッと引き寄せられます♪

絵の力強さに圧倒される!!!!
私がこの本を選んだ理由

スイミーは、頭が良かったからこんな素敵なアイデアを思いつく事が出来たのでしょうか?
きっと、旅の途中でみてきた美しい世界(○○のような△△)にインスピレーションを受けて素晴らしいアイデアを思いつく事が出来たのではないかと思います。
世界は美しい
幼少期、国語の授業で「みんなで力を合わせて頑張れば、どんな事も乗り越えられるね」という教訓話として出会ったスイミーはとても押しつけがましくつまらなく思えてなりませんでした。
確かに、皆で力を合わせたから得られた結果もあります。でも、そんな教訓を描きたいだけならはじめに仲間達が全員食べられてしまうシーンが本当に必要でしょうか?
仲間たちが全員食べられ、孤独になってしまったスイミーは悲しみのどん底に突き落とされます。スイミーは泳いだ、暗い海の底を。怖かった。寂しかった。とても悲しかったという文章からも、スイミーの心情が読み解けます。
でも、この出来事があったからスイミーは海の美しさに気付き、自分という存在そのものについて深く認識を深めていく事になります。全7ページを費やされたスイミーが孤独を乗り越えいく過程はこの物語において非常に重要です。
(このシーンにどんな意味があったのか?という部分を紐解くためには、レオ・レオ二の思想や生涯について語る必要もありますので今回は割愛しますが大切である事は協調しておきます)
時に残酷だけれど、それでも美しい世界を生きていく子ども達にぜひ届けたい絵本の1つです。
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