食の好き嫌いが起こる理由。克服は出来る?

幼児保育の基礎理論

ある年少児の保護者さんから、連絡帳を通して以下のようなご相談がありました。

お家では、お野菜を全然食べてくれないのですが、保育園ではどうですか?できれば食べられるようになって欲しいです。

moma
moma

こんなお悩み、よくありますよね。

あい先生
あい先生

園で担任を持つ先生方の中にも、

食事場面の好き嫌いに悩んでいる方は多いと思います💦

という事で本日は、この問題について私の科学的知見を基にした、独断と偏見でこの問題について語ってみたいと思います。

※この記事は、幼児保育を考える事を前提に執筆しています。乳児における好き嫌いについてはコチラのQ&Aを参考にされてみて下さい。

好き嫌いのメカニズム

あい先生
あい先生

子どもってどうして好き嫌いが多いのかな?

moma
moma

特に野菜は苦手な子が多いよね!それには、きちんと理由があるんだ!

好き嫌いの起こる理由をいくつか紹介するよ!

①先天的にもって生まれた好み

まず前提として、食の好き嫌いには「先天的なもの」と「後天的なもの」があります。

そもそも、私たち人間の食の好みは千差万別!先天的な好みの差がある というのは当然の事です。

例えば、私はバナナが苦手な子どもでしたが、大人になった今でも食べる事が出来ません。生まれた時から、現在に至るまでバナナは苦手なままで生きています。

学校給食やおやつにも登場する事が多いフルーツなので、何度も「少しだけ食べてみよう」と食べさせられた事がありますが、その時間はいつも苦痛で一向に食べられるようになる気がしませんでした。

それどころか、「少しだけ食べてみようね。今日のは美味しいかもよ!」なんて言われるほどに、バナナに対する嫌悪感が増し、ますます嫌いになった事を覚えています(笑)

つまり、先天的にその食べ物が嫌いである場合『食べる練習』をしてもその味に慣れて食べられるようになるとは限らないのです。それどころか、無理な『食べる練習』はその食べ物への嫌悪感を増すリスクさえある為、健全な食育とは言えませんね。

②防衛反応

好き嫌いに基づいて食べ物を選択するは、立派な「防御本能」です!つまり、私たち人類にとっての「生存戦略」とも言えます。

本来自然の中で暮らしてきた私たち人類にとって、知らないものを食べることは、非常にリスクが高い事ですよね。もしかしたら、毒があるかも知れないし、腐っているものかもしれない。これらをはじめから避ける事が出来るか否かは、生死に直結する大切な選択です。

具体的には、子どもは「苦味=毒」「酸味=腐敗」と認識して避ける傾向があると言われています。そう考えると、ピーマンや酢の物が苦手な子が多いという事にも納得が出来ますね。

③味覚嫌悪学習

私たち人間は、過去の経験からその味覚に嫌悪感を持つ事が出来る能力を持っています。

例えば、生牡蠣を食べて食あたりを起こした人の中には生牡蠣そのものの味を嫌いになる人もいますよね。このように、内臓に直接不快感を感じた経験がある等、その食べ物を通して有毒性を感じたものを人は「嫌い」になるように学習が出来るのです。

これを味覚嫌悪学習と言います。私たちが種として生き残っていく上で欠かせない能力という訳です。

また、味や内臓の不快経験の他にも「硬くて呑み込めずに、苦しい思いをした」という経験も味覚嫌悪学習に影響を及ぼす事があります。

④食経験の未熟さ・味覚の敏感さ

当然ですが、子ども達はまだまだ食経験が未熟です。その為、好き嫌いが多くても当然と言えます。

また、子どもの舌は大人よりも敏感に味を感じると言われていますよね。個人差はあれど、子ども達は大人の約3倍も味を感じると論じる方もいらっしゃいます。

私はカレーライスが大好きですが、普段のカレーが3倍辛かったら…もしかしたら苦手になっていたかも知れません(笑)

また、家で洋食中心の食生活をしていれば和食が苦手だったりするのも自然な事だと思います。このように、普段の食生活に偏りがある事も好き嫌いの要因になったりします。

⑤感覚過敏?

感覚過敏という言葉も、最近では保育現場で当たり前に聞かれるようになってきましたね。

味覚においても、その感覚に過敏性を持つ子がいます。特に保育の現場で働く私たちは多様な子ども達と接する事を受け入れ、理解していかなければいけません。

食に関しても、子ども一人ひとりを大切にした関わりを大切にしたいですね。

子ども一人ひとりを大切に育てるは、私の所属する園の理念です。

克服できる?

あい先生
あい先生

子ども達が好き嫌いをする理由が分かってスッキリしました

moma
moma

好き嫌いをただの我がままと捉えてしまうと大人も子どもも不幸になる!

好き嫌いの裏には色々な理由があるという事を、まずは理解してあげたいですね。

今回は、好き嫌いが起こる代表的な要因を5つに絞って紹介をさせて頂きました。

このように考えると、子ども達の好き嫌いにも寛容になれますね!

あい先生
あい先生

でも、好き嫌いを克服したっていう人もいますよ?

moma
moma

そんな人もいるね!

でも、克服できる人と克服できない人がいる事も知っておく必要があよ!

以下の引用からも分かるように、大人になって苦手な食べ物が克服できるか否かは、遺伝的な味の感受性が関与している可能性も指摘されています。

食べ物が克服できない者と克服できた者がいることが分かった。克服できない理由の可能性として,遺伝的な味の感受性の違いが関与している可能性がある。

PROP(6-n-propylthiouracil)やPTC(phenylthiocarbamide)は,-N-C=S 構造をもち,苦味を呈する物質であるが,この苦味を弱く感じたり,ほとんど感じなかったりする人たちは,いわゆるnon-taster(味盲,tasteblindness)と称せられる11,12)。

PROPやPTCを苦く感じるtasterのうちとくに強く感じる人をsuper-taster という。小杉及び堀尾10)によると,super-taster は non-taster に比べ,トマト,ピーマンといった緑黄色野菜やゴーヤ,パセリ,ミョウガ,タケノコなど,苦味を呈する野菜が多く見られたという。

PROP味覚感受性と生ほうれん草や生ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜との間に,相関があることが示唆され13-16),PROPの感受性が高い人は,これらの野菜の味にも高い感受性を示し,嫌う傾向があると考えられる。

また,PROPの苦味に対する感受性の低い人が,くせのあるものに対する嗜好度が高いという報告17)や,PROP高閾値者はチェダーチーズやスイスチーズの苦味を弱く感じる18)。このように,PROPの呈する苦味に対する感受性が深く関与している可能性がある

引用:嫌いな食品の嗜好変化に関する研究 KJ00007787479 (1).pdf

克服年齢を見てみよう!

引用:健康教育No.200 200-kenkou-webのコピー

〇代表的な苦手食品の中でも、在園中(6歳ごろまで)に克服できる可能性があるのは人参・玉葱・トマトあたりですね。(※もちろん、個人差がある事は前提です)

酢の物やシイタケ、ピーマンやネギなどは、もう少し年齢が上がらないと克服できない子の方が多いようです💦

長期的な視点を持つ事がポイント!

先ほどの克服年齢からもわかるように、苦手食材も年齢を重ねるとともに食べられるようになるケースもあります。そして、その年齢は案外高いものが多いです。

あい先生
あい先生
  • レバー
  • ピーマン
  • シイタケ
  • 酢の物
  • ナス

なんかも保育園給食でよく出てくる食材なのに、

在園中に苦手を克服するのは、難しいんですね💦

moma
moma

この他にもブロッコリーやタケノコも克服が難しい印象だよね(笑)

これらの結果を加味して、保育園に在学している6歳までの間に全ての苦手を克服させようとせず、しっかりと大人が長期的な視点を持つ事が大切であるというのが、「ほいくふぁん!」の結論です。

まとめ

今回のコラムでは、そもそも子ども達の苦手は在園期間中に克服できるのかという点について、統計的なデータをもとに確認してみました。

保育士さんの中には在園期間中になんでも食べる子になって欲しいと思う方も多いと思います。

そこには「小学校で困らないように!」という願いもあるでしょう。ですが、本当に小学校で困らないようにと願うなら

  • 食材の名前が分かる
  • メニュー名から味が想像できる
  • 自分が苦手なものを大人に伝え、減らせる

といった力を身に着けられるようにしてく方が良いと、私は思います。

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