大人にもファンが多い、レオ・レオ二が生み出したロングセラー!
基本情報
作 | レオ・レオ二 |
訳 | 谷川俊太郎 |
出版社 | 好学社 |
初版 | 1969年 |
おすすめ年齢 | 4歳~ |

大人が読んでも、私は私のままでいい!と思える素敵な絵本です。
あらすじ

仲間たちが冬に備えて食べ物を貯えているのに、フレデリックだけは何もせず、ぼんやりしていました。やがて寒い冬が来て…
みどころ

ちょっと変わった主人公
絵本「スイミー」と同様に、主人公が他のみんなと少し変わった存在として描かれています。
このちょっと変わっている存在というをどこまでも肯定的にとらえるのが、レオ二の絵本の素敵なところです。
変わっていても別に良い!というのではありません。変わっている存在も必要なのです。言い換えれば、みんな違うからこそ面白い!のです。
フレデリックを受け入れる仲間たち
フレデリック(=異質な存在)をこれほど自然に仲間に抱え込んでいる野ねずみ達の温かさは絵本から十分に伝わってきます。彼らは決してフレデリックを仲間はずれにしません。
「受け入れてあげている」「別にフレデリックみたいな仲間が居ても良いよね」というレベルではなく、もっと心から自然にフレデリックと仲間関係を築いている野ねずみ達が本当に素敵だなと思います。
寒い冬がきて、状況が厳しくなった時「君が集めたものはいったいどうなったんだい?」と他の仲間たちはフレデリックに聞きます。以前、フレデリックがつぶやいた事をしっかり覚えていて、フレデリックの話もちゃんと聴こうとしている部分に垣間見える関係性もとっても素敵です。
お互いがお互を必要としている
フレデリックは、働き者の仲間たちが食料を集めてくれたから、餓死せずに寒い冬を乗り越えていけるし、自分の感性を磨き続けることができます。
対して野ねずみ達は、フレデリックがいたから寒い冬にも豊な時間を過ごす事が出来ます。
仲間たちが居なければ、フレデリックの身体は危険な状態になるでしょうし
フレデリックが居なければ、仲間たちの心は危険な状態になるでしょう。
お互いが社会にとって必要な役割を持っています。そこに上下関係はありませんね。
子ども達が共感して、心を寄せる
作者レオ二によると、フレデリックは現代社会における芸術家の役割を語った物語だそうです。実際、ねずみ達はフレデリックが集めたものに凄く救われます。
変りもののフレデリックだったから、こんな事が出来たのです。自分の目で物事を見て、そしてそれを言葉として紡ぐ才能がフレデリックにはありました。
そして、この絵本で芸術家の役割を描いたと言ったレオ二は、「4つや5つの子どもが、私がいわんとした問題点を明確に把握できるはずがありませんが、その点はちっとも構わないのです。子ども達は面白い話だな、このネズミ僕とそっくりじゃないか。と思ってくれるでしょうから」と語っています。
絵本は理解する事が大切なのではなく、心に残る事に価値があるのでしょう。幼児期にフレデリックに子ども達は、きっと彼を大人になっても忘れないでしょう。
レオ二が描く、繊細な表情
この絵本も、レオ二の絵が本当に素敵です。全てのページがよく物語を語っていて、とても美しいですが、中でも「君って詩人じゃないか」と言われたフレデリックが「そういうわけさ。」と答える時の表情はとってもナイーブで素敵です。
こんなにも繊細に表情を描けるレオ二はやっぱり天才だと思います。
レビュー・感想

価値観が変わる1冊
これは、大人の価値観を変えてくれる1冊だと思います。あるいは、大切な事に気づかせてくれる1冊だと思います。
特に保育士さんや学校の先生は、思うところがたくさんあるのではないでしょうか。
ここで深くは語りませんが、私たち大人がフレデリックに登場する野ネズミたちのようにありたいですね。
フレデリックのようなあの子
この絵本は、僕も大好きな絵本の1つです。私は絵本を1人の子に贈った事があります。その子は療育施設に通う子でしたが、とっても素敵な感性を持つ子でした。
色々な素敵な遊びをしていましたが、私が特に惹かれたのは彼が積み木で遊んでいる時でした。
積み木でつくる彼の作品はアイデアが豊富で素晴らしいものばかりでした。「あぁ、こんな積み方が出来るんだ」「この発想はなかった!」と驚く事ばかりで、その子をきっかけに私も積み木にハマりました。今でこそ、ネフの積み木を題材に研修活動など行っていますが、私の師匠は相沢康夫さんとその子の2人です。
私はその子どもを、まるでフレデリックみたいだと思いました。きっとその子も、フレデリックに出会い「このネズミ、僕とそっくりじゃないか!」と感じたのではないかなと思います。
ここまで読んでみて「あぁ、あの子にこの本を届けたい」と思った方は是非読んであげて下さい♪
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