発達には個人差があります。まずここをしっかり再認識しましょう。カラフルでいいのです。
そのうえで個人差のある発達をしっかり認めていく事が大切です。私も 多様な発達があって良いという考えが本当の意味で日本全土に浸透することを心から願っています。
しかし幼児教育のプロである保育士さんはさらにもう一歩踏み込んだ視点で発達をとらえています。
保育士は多様な発達を肯定的に認めたうえでもう一歩踏み込み、その“理由”を探します。理由を考える事で、子ども理解が格段に深く・早くなるとともに、質の高い適切な配慮を実践、提案できる可能性が高まります。
本記事では、保育士が多様な発達をとらえる際の3つの視点についてご紹介いたします。
①気質
気質とは、人が生まれながらに持っているもので性格の土台を形成する要因の1つであるとも考えられています。
特に赤ちゃん(乳児のころ)から個人的な特徴を示しやすい発達の差については気質の影響によるものが大きい可能性もあります。
気質による発達の個人差は中でも遊びではなく、生活のリズムへと影響しやすいです。食事・睡眠・排せつのリズムが安定しなかったり、生活習慣の獲得に困難を感じる場面もあると思います。
乳幼児期はひとり一人の子どもを大人が丁寧に見てあげる事が可能なので、大きな困り感などには繋がりませんが就学後、集団生活への適応が必要な場面での躓きを生む可能性もあります。
また、人見知りが強い子どもは、保護者から離れられなかったり、新しい場面に強い不安感を抱く場合もあります。このような気質が要因でなかなか自分を出せない姿へとつながっていく事も考えられます。
このような理由から、気質による発達の偏りは乳児の段階で気づき、適切な支援を行っていく事が大切であるといえます。
【保育士に求められる関わりの例】
- 様々な経験を通して対人面での成長を目指して見守る。
- 過程と協力し、生活リズムの一定化及び改善に働きかける。
- なんで出来ないの?などと声をかけない。
- 子どもが生活の見通しを持てるような保育環境や日課(スケジュール)となるよう見直しをはかる。
- 長期的な支援を視野に入れた関わりを展開する。
②家庭環境
子どもを取り巻く家庭環境はその発達に大きく作用します。特に脳の発達には大きな影響を及ぼすのがこの家庭環境です。
具体的には、
- 虐待が考えられる場合
- 養育者が育児不安や鬱を抱えている場合
- 夫婦関係の躓きが子どもに影響している場合
などが想定されます。1つずつ、もう少し詳しく見ていきましょう。
虐待が考えられる場合
いわゆる「キレ易い子」とも呼ばれているカッとなりやすい子や、すぐに暴力で問題を解決しようとしてしまう子どもは保育の現場では比較的、問題として取り上げられ易く、発見もしやすいです。
この場合、行動をしっかりと否定していく事は重要ですが、その子の人格までを否定するような関わりになってしまわないように十分に注意する必要があります。
問題にアプローチする際には、「なぜその行動に出るのか」「どうしてそんな態度をとる必要があるのか」といった理由や背景を考えてみる必要があります。
例えば、保護者が短気で子どもを上手に受け止める事が困難な状況が続いた場合、子ども自身も自分が信頼できる大人に受け止められるという経験が不足してしまいます。結果、愛着がうまく形成されず様々な影響が発達の中に現れる可能性があります。
この場合も、子ども自身と保育者が情緒的な絆をしっかり形成する事が援助の第一歩となります。やはり、長期的な視野と見通しをもって個別の計画を立てる必要があります。
【保育士に求められる関わりの例】
- まず、保育園で対応可能なケースか否かをしっかり園全体で話あう事が求められます。
- 保育園での対応が難しいと判断された場合は、他機関との連携を視野に入れた援助を考えていく必要があります。
- 家庭への介入が必須なケースが多いので、専門家と連携を取りながら慎重に援助を進めていく事が大切です。
- 保育士は子どもとしっかりアタッチメントを築く事を最初の目標と設定し、子どもの姿をよく観察して行動の変化をしっかりとらえていけるようにします。
- また、家庭の環境が悪化していないかも子どもの姿などから敏感に察し観察していく事も園全体で行う必要があります。
養育者が育児不安や鬱を抱えている
信頼できる大人との情緒的な絆が形成され、安定した環境で過ごす事が望まれる乳幼児期であればこそ、養育者のストレスや不安定な環境、精神状態からなる家庭の環境は、子どもの発達にも影響を与えやすいものです。
例えば、孤立した保護者がだれにも相談できず、不安な気持ちで子育てをしているかもしれません。あるいは、産後鬱のような状態にある可能性もあります。
このような場合を含む、保護者が子どもに十分な注意を向けられていないケースでは子どもにとっての応答的な関わりが不十分である事が考えられます。応答的な関わりの不足は発達に大きな影響を及ぼします。
【保育者に求められる関わりの例】
- 保護者に対し、共に育てているというメッセージを常に送り続けていくべきでしょう。
- 保護者の子育てに対する不安を軽減させる事、加えて地域の資源を有効に活用し、サポート体制を整える事も大切です
- さらに、家庭のニーズを的確にキャッチするための日々の関わりにも意識的に時間を使っていきましょう。
夫婦関係の躓きが子どもに影響している。
正直、ここは保育者が介入できない問題でもあります。子どもの為とはいえ、度を越えた介入は園への不信感やトラブルへと発展してく事も多い為、注意が必要です。
子どもは大人がけんかをしていたり、不機嫌な様子を見たり、最悪の場合目の前から大切な大人がいなくなるという経験をする事になる。
このような心理的なストレスはが発達に影響する可能性は十分にある。
【保育者に求められる関わりの例】
- このケースでは、保育者が家庭環境に深くかかわる事は避けるべきである場合が多い
- 例えば、両親の離婚を「自分のせいかも」と自責してしまう子どもも少なくない。このような心理状態に子どもがなる事がある。この事を心にとめて、しっかり子どもの様子を観察してあげる事は必須である。
- また、保育者とのアタッチメントを十分に形成していく為に、子どもをしっかり認める関りを継続して行っていく。
- さみしさや情緒が不安定な事が原因で、生活が落ち着かなかったり暴力などが出た場合も、行動は否定しても子どもの気持ちは決して否定しない事を心掛けていきたい。
③気になる子ども・グレーといわれる子ども
保育の中では、いわれる気になる子どもと言われる子どもがいます。グレーゾーンなどと表現したりもしますが、これについても様々な意見があり、「パステル」と呼んだり「個性的な子ども」と表現したりもしますが、今回はそこが論点ではないので、一般的にイメージしやすい「気になる子ども」「グレーな子ども」という表現を使用しています。
具体的な特徴としては、
- 部屋からすぐに出ていってしまう。
- 常に落ち着きなく走り回る
- 睡眠に困難がある。
- 砂や粘土などを異常に嫌がり、触ろうとしない。
- 人との関りや、ふれあいが困難である
- 抱っこやおんぶをし難い
- 目が合わない
など、その他日々の生活の中で困り感がある子どもさんには特に専門的な支援が必要です。
要因としては感覚統合の躓きや未発達が考えられます。
【保育者の関わりの例】
- 環境を見直してあげるのは大きなポイントです。感覚的な未発達を訓練しようとするのではなく、まずは子どもが心地よく過ごせる環境を用意してあげる事が大切です
- その上で可能であれば、感覚にアプローチする遊びを提供していきましょう。その際、可能であれば専門的な知識を持つ保育士や療育の先生に相談する事もおススメです
- 可能であれば専門機関に繋がるように支援していきましょう
- 出来ないのではなく、子ども1人ひとりの個人差とみて理解し、対応を共有し日々の保育に活かしていきましょう。
まとめ
子どもの発達には個人差があります。
それはしっかり認めていくべきですが、中には以上のような理由で発達に遅れや困難が生じている場合があります。
気質か、家庭環境か、感覚統合の躓きなどから来る姿か。
このような事を意識し、多様な発達の裏にある背景を一緒に理解する努力をする事が保育士には必要なのです。
そうする事によって、適切な支援を考えやすくなります。
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